石物語&なぞり書き

石物語&なぞり書き

オブシディアン(黒曜石)の物語

「おや、これはこれは!」 彼が差し出したのは、黒く艶やかな石ころ。掌に乗せてみると、つるりとして、妙に気持ちがいい。「お前さん、この石が何か分かるかね?」「さて、魔法の石とか?」
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トパーズ(黄玉)の物語

トパーズのきらめきったら、まるで夕焼けを閉じ込めたみたいで、見てるだけで心がほっこりするんですよ。昔から「希望の石」って言われてきたそうで、持ってると憂鬱な気分が吹っ飛ぶんですって。わたし、先週の水曜日、ちょっとした落ち込みがあって、このトパーズの指輪をはめたら、不思議と元気が出てきたんです。迷信だなんて笑わないでくださいね。古代ギリシャでは、トパーズが怒りを鎮め、知恵をもたらすって信じられてたそうですから。ほら、あなたにも少し触らせてあげましょうか。この温かさ、ちゃんと伝わりますでしょう?
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トルマリン(電気石)の物語

その石は、淡い桃色をたたえながらも、どこか冷ややかな光沢を放っていた。「恋愛運を高める」という触れ込みは、一種の迷信に過ぎないと知りつつも、人々はその小さな結晶に己の希望を託すのである。その滑稽さと哀れさが、妙に心に残った。
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スフェーン(楔石)の物語

 彼女は高級ホテルのラウンジで、スフェーンをはめた指輪をさりげなく見せびらかしていた。「これね、運気を上げるって言われてるの。まあ、信じるかどうかは別として」 と笑いながら、隣の女の嫉妬の視線をしっかり受け止めていた。
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オパール(蛋白石)の物語

「それでさ、あの石が光るって言うんだよ」彼は急に話を切り出した。「オパールだっけ。虹みたいな色が揺れるやつ。」 僕は曖昧に頷いた。彼の話はいつもどこか現実離れしているけど、妙に信じたくなる。
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サンストーン(日長石)の物語

 石の中で、時間が逆流を始めた。 バイキングの航海士が見たという北極星の光が、石の中で瞬いている。チベットの医師が祈りを捧げたという金色の輝きが、今も消えることなく続いている。 そして。 古代の戦士の血が染み込んだという赤い色合いが、今この瞬間も、新たな物語を紡ぎ出そうとしている。
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#25 サファイア(蒼玉)

いにしえより伝わる青玉、サファイアは、智恵の結晶として仰がれし宝石なり。その深き青は、天空の神秘を映し、心の迷いを静める力を宿すとされる。古の王侯貴族は、この尊き石を身に付けることにより、邪なる気を祓い、清らかなる心を護りしと伝えらる。殊に、真実を見抜く力と、高き叡智を授くる力あり。
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#10 アイオライト(菫青石)

蒼き霧に包まれし秘石にして、光の戯れにより姿を変ず。時に深き紫紺の衣をまとい、時に淡き蒼穹の面影を映す。見る者の心眼を試すがごとく、角度により異なる表情を見せるさま、まるで夢幻の世界へ誘う導き手のごとし。
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#24 クンツァイト

の深みに淡き桃色の光を宿せる石あり。朝の光を浴びれば淡く紫がかり、夕映えに染まりては薔薇の輝きを添うなり。この石を手にする者は、穏やかなる癒しとともに、清らかなる心の目覚めを得ると伝えられしものなり。
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#23 クリソプレーズ(緑玉髄)

その色は春の若葉のごとく鮮やかに、深き森の奥にきらめく泉の如し。翡翠に似て玉のごとく滑らかなる肌理は、人の掌に収まりて温もりを増す。古より聖石として崇められしこの石は、エジプトの王冠を飾り、聖書の城壁を彩りき。皇帝の宝剣に嵌められしは、その清浄なる気を以て邪気を祓う力なりと信ぜられし故なり。