石物語&なぞり書き

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トパーズ(黄玉)の物語

トパーズのきらめきったら、まるで夕焼けを閉じ込めたみたいで、見てるだけで心がほっこりするんですよ。昔から「希望の石」って言われてきたそうで、持ってると憂鬱な気分が吹っ飛ぶんですって。わたし、先週の水曜日、ちょっとした落ち込みがあって、このトパーズの指輪をはめたら、不思議と元気が出てきたんです。迷信だなんて笑わないでくださいね。古代ギリシャでは、トパーズが怒りを鎮め、知恵をもたらすって信じられてたそうですから。ほら、あなたにも少し触らせてあげましょうか。この温かさ、ちゃんと伝わりますでしょう?
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ソーダライト(方ソーダ石)の物語

朝の柔らかな光が、窓辺のソーダライトに降り注いでいる。夜の間に溜め込んだであろう静かなエネルギーが、深い青色の中に満ちているように見えた。昨日の疲れや、漠然とした不安が、この石の静けさに触れて、すうっと溶けていくのを感じる。まるで、清らかな水で心を洗い流してもらったみたいだ。
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アメジスト(紫水晶)の物語

何度も書き直したメール。結局、送信ボタンを押せないまま、夜が更けていく。言葉は時として、想いとは裏腹に相手を傷つけてしまうことがあるから怖い。ため息と一緒に出てきたのは、苦い自己嫌悪。
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カーネリアン(紅玉髄)の物語

私はカーネリアンの指輪を買った。七十を過ぎた女が、そんな赤い石の指輪をはめて何になるというのだろう。店員は「恋愛成就のお守りです」と言ったが、私の年齢では笑い話だ。それでも、この石には惹かれるものがある。赤い色が生命力を感じさせる。若い頃のような情熱は失われても、まだ何かを始める勇気は欲しい。馬鹿げていると思いながらも、私は毎日この指輪をはめている。不思議と、指先から力が湧いてくるような気がするのだ。
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スギライト(杉石)の物語

引き出しの奥にしまっていた紫色の石。ひさしぶりに手に取ってみた。スギライト、っていう名前だったっけ。心が元気になるお守り、って雑貨屋さんのポップに書いてあった。元気かな、今のわたし。分からないけど、この石のひんやりした感じは、ちょっと好きかもしれない。
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ローズクォーツ(紅石英)の物語

ローズクォーツの指輪を買ったのは、彼と別れた翌日だった。「これで恋愛運が上がります」なんて、店員の軽いセールストークに乗せられたわけじゃない。ただ、あまりにもピンク色が甘ったるくて、見ているだけで気分が悪くなりそうだったから。
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ラブラドライト(曹灰長石)の物語

「これがラブラドライトね」と彼女は言った。「ほら、角度によって色が変わるでしょ」 確かに石は光の加減で青や緑、時には金色にも見える。「昔、海賊が持ってると魔除けになるって信じられてたんだって」 俺は半信半疑で石を手に取った。ひんやりと心地良い。
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アマゾナイト(天河石)の物語

いわゆるパワーストーンというものに、正直なところ少々懐疑的ではあった。けれど、友人から「決断力がつくらしいよ」とアマゾナイトのピアスを贈られて、まあ、アクセサリーとして綺麗だし、と着けてみることにしたのだ。空色に白い筋が入った、爽やかなデザイン。「ホープストーン」なんていう、若干気恥ずかしい別名もあるらしい。
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スモーキークォーツ(煙水晶)の物語

五十代も後半になると、なぜか石に惹かれ始める。以前の私だったら「何それ、オカルト?」と一蹴していたことに、今は素直に「いいなあ」と思えるようになった。スモーキークォーツなんて、煙のような模様が入った茶色い水晶にすぎないのに、「邪気を払い、精神を安定させる」なんて言われると、急に欲しくなる。
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ムーンストーン(月長石)の物語

窓辺に置いた小さな石が、朝の柔らかな光を受けてほんのりと青白く輝いている。「月の雫石」と、ここのおばあさんは呼んでいた。夜の間に溜め込んだ月の優しい力を、朝になるとこうして少しずつ放つのだそうだ。見ているだけで、心がふわりと軽くなるような気がする。
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